「老後に乗るつもりだったMini」
──30年のバトンが、いま木田さんの手で走り出す日がやってきました。
“Miniに乗るのは、老後の楽しみやって思ってたんです”
静かに、けれどしみじみと語る木田さんの目には、Miniへの特別な想いが宿っていました。
30年前──キングスロードで新車としてこの世に送り出された1台のMini。
2人のオーナーの手を経て、15年前、イベントのフリーマーケットで見事Kさんのもとにやってきました。
そして今、長い眠りから目を覚まし、再び走り出す準備が整い、、いま。
1 中学生で出会った“未来の車”
木田さんがMiniに出会ったのは、中学生の頃。
「プラモデルを作ってましたね。当たり前のように、“将来はこれに乗る”って決めてました」
あらゆる所で見かけるたびに惹かれていった、小さくて、丸くて、どこか品のある姿。
“将来”という言葉が、まだずっと遠い存在だった頃、Miniは木田さんにとって理想の象徴だったようです。
「昔から“丸目”が好きなんです。あの優しい顔を見ると、なんか落ち着くんですよ」
Miniはただの車じゃなかったんです。
未来への夢であり、心の奥に残り続ける“ひとめぼれ”だったそうです。
2 一度手にしたけれど…中途半端な気持ち
30代半ば。ようやく手が届きそうになった頃、1台のMiniを手に入れたそうです。
でも──
「その時、自分の気持ちが中途半端やったんです。事業を始めたばかりで忙しくて、かわいがってやれへんかった」
Miniに対する気持ちがあったのは確か。だけど、向き合う余裕がなかった時期で、
結果、せっかく手に入れたMiniを手放してしまうことに。
「今思えば、あれはMiniにも、自分にもかわいそうなことしたなぁって思います」
心の中にはずっと引っかかっていたんですね。
“いつか、ちゃんと迎えに行かなあかんな──”
3 フリーマーケットのくじで巡ってきた運命
そして運命は、思いがけない形で訪れました。
15年前、キングスロードで開催されたフリーマーケットのイベント。
その日、Kさんはくじ引きで1台のMiniを見事当てました。
「まさか自分が当たるなんて…。あれは本当に“巡ってきた”って感じでしたね」
このMini──実は、今から30年前にキングスロードで新車として販売されたものでした。
そこから2人のオーナーが乗り継ぎ、長い時間を旅して、最終的に木田さん元へ。
「もうね、すぐガレージに入れました。いつか乗る、その日まで大事に置いとこうって」
それから15年。Miniはずっと自宅ガレージで静かに眠り続けていました。
4 、30年越しの再始動──Miniと生きるこれから
今、ついにその扉が開かれる。
生活も落ち着き、子育てもひと段落。
「今なら、このMiniと向き合える」──そう思ったKさんは、迷わずキングスロードに声をかけてくれました。
「やっぱり、始まりの場所に戻りたかったんです」
社長の人柄、スタッフの情熱、Miniへの深い愛情。
15年前のイベントで感じた“安心できる場所”が、今のきださんを動かしたようでした。
「このMiniと一緒に、どこでも行きますよ!どこへでも──」
30年前、新車として誰かの人生を走り出したMiniは、今、また新たな章を迎えています。
そのハンドルを握るのは、15年もの間、静かに夢を温めてきてくれました。
車輌情報
・モデル名:ローバーミニ1300本国仕様1300キャブ車スプライト
・年式:1995
・購入時期:15年前のフリマの抽選
99800円のくじ
・ボディカラー:フレームレッド
木田さん
素敵なお話をありがとうございました。
Miniはただの車じゃなくて、「いつか」の夢を乗せるタイムマシンみたいな存在。
15年前に出会っていただいて、
ガレージで眠っていたMiniが今、風を切って走る姿を、きっと昔の自分が誇らしげに見ているはず。
これからもMiniとの時間を、どうか思いっきり楽しんでください。
そして、またツーリングでお会いできるのを楽しみにしています。